新規開業支援業務

開業間近の先生の為のQ&A

現在利用している自家用車などを開院後に通勤用に使う場合、
税務上の処理でローン残分を経費にまわすことはできるのでしょうか?

自家用車の件ですが、事業用と私用(家事用)との区分線がいわゆるグレーゾーンとなりやすいところです。

乗用車であれば、購入代金は6年間で1円を残して減価償却費という経費となります。
減価償却費は、説明が長くなりますのであとでご説明するとします。

通常、その車の使用頻度(具体的には1ヶ月程度の期間中の走行距離等)によって減価償却費や他の経費(車検修理代・保険料・自動車税・ガソリン代等)を合理的に配分し、事業用分は事業経費となります。

「勤務地と居宅との通勤に必要」との主張ができる場合、総額の7〜8割程度を事業用として申告をされる方が多いです。

ただし、業務用の車と私用の車の2台を所有しておられる場合には、当然、業務用の車分の経費は全額事業経費となります。

また、現在使用中の車の場合は、車の購入日から業務での使用開始の日までの期間分の減価償却費(定額法)を計算し、使用開始時点での車の残存価格を算出した上で減価償却費の計算をします。

減価償却費は少しわかりずらいかもしれませんのでご説明申し上げます。

税法上では減価償却費とは単価30万円以上のものについては、その使用可能期間に配分して経費にすべきとして支払った年に一括経費とすることができません。

乗用車であれば6年といった法定耐用年数が定められており、この法定年数の期間において毎年価値の減少分を減価償却費として経費とすることになります。

また減価償却費は2つの償却方法があり、毎年一定額を均等に償却する方法(定額法)と毎年減価償却後の残存価格に法定率をかけてゆく方法(定率法)とがあります。

定率法は当初の減価償却費が多額なので当初の税負担が軽減されるメリットがある反面後半以降は納税負担が発生し資金難となりやすいことから、当事務所では、3年以内に利益に転換することを想定しておられるのであれば、定率法の採用をお勧めしております。

このように経費とできる減価償却費は、ローン残分とは無関係な数字となりますことをご了承ください。
尚、ローンの元金部分は経費とはなりませんが、利息部分は経費となりますので誤解のないようにお願いいたします。

開業後に通勤用として新規購入したマイカーの場合、
元本部分は年次で減価償却され利息分が毎月の経費に計上できるということでしょうか?

既存から所有の車のみを私用(家庭用)に使い、新規購入の車を事業専用に使うのであれば、そのとおりです。
すなわち2台の車を所有する必要があります。

たとえば月に400万の収入があったとして、20万円の経費を計上する場合
380万円に対して課税されると理解しています、税率が30%の場合、(400-380)X0.3=6万円分が浮くと考えていいのでしょうか?

所得税のみを考えた場合としてはお考えのとおりです。

しかしながら、税金は所得税のみならず住民税(最高 税率10%)が発生します。

したがいまして、所得税率33%の場合の住民税率は10%と推測されますので経費の効果は(400-380)X0.43=8万6千円となります。

税金は支払う時期が遅いので実感は沸きませんが、結果的には「経費200,000円−税金の減少86,000円=財布の中身の減少114,000円」となります。
114,000円の支払で200,000円も価値が買えるわけですので、お買い得感が高いように感じられると思います。

ただし、逆にいうと114,000円は確実に減ることになるのですから、最低限必要な経費のみにすることが肝心です。

大型機器の購入(MRI、CT等)を銀行融資分で購入するか、
ローンを組むかなどを決めないといけないのですがどうすればいいでしょうか?

銀行融資もローンも購入するための借入金ですが、機器の金額が高額であればリースの利用も候補にあげてはいかがでしょうか?

購入する場合、銀行融資・ローンの返済期間は通常短いものが多く、5年〜7年程度かと思われます。

たとえば、借入金額3,000万円、利率2.5%、5年返済とした場合の返済額は利息をあわせて3,191万円(元金均等、年間平均約638万円ですが初年度ほど多額)となります。

もちろん、返済が終われば所有権は購入者にありますので、その後は安泰ですがいかんせん返済金額が多すぎて資金がショートする可能性が発生します。

これが5年リースであれば「購入価格−5年後の残存価格(下取り価格)を差し引いた金額」を元に利率(銀行金利より若干高)をかけるといった具合にリース金額は定められる事から5年間の支払額は借入返済よりもはるかに少なく、開業の際はこの方法が一番安全かと考えます。

ちなみにリースにするか否かは、リースの見積もりをとった上で検討する必要がありますがまずは購入する予定金額の見積書(最安値が望ましいですね)を作ってもらってください。

その見積書の金額を持ってリース会社と交渉されることをおすすめします。
この場合、見積書を出した機器会社からリース会社が買い取りそれをリースすることも考えられます。

MRIであれば4000〜4200万、CTであれば2000万というところで考えています。
MRIにするかCTにするかで、現在もかなり悩んでおります。

他の競合施設との差別化という点ではMRIの方が良いのではないかと思ったり最初はCTで低リスクでやった方がよいのかと考えたりでなかなか決まりません。

MRIであれば、銀行融資が7000万可能ならそれ以外の機器(1500万程度)をリースに回してMRIは買い取りにした方がよいのか、銀行融資をなるべく抑えて、MRIをリースにした方が良いのかが分かりません。

MRIをリースに組むと月々の返済が60〜70万となり、かなりの負担になるのではないか心配です。

高額な医療機器の購入の為の資金調達方法ですが、銀行が融資してくれて20年返済で組めるのであれば単純に考えると、その方が 月々の負担が少なくてよいのではないかと思いますがどうでしょうか?

融資についてはまずは金融機関に打診してみる必要があります。
ただし、現在の金融機関は社会情勢から考えても融資は非常に厳しいのが現状です。

地方銀行は、政府が行おうとしているペイオフ期限までに預金を増やし既存の貸出金を回収する事で生き残りをかけています。
また、大手都銀も既存の企業への貸し出しも返済可能と判断できない場合には新規貸し出しをしておらずどの金融機関もひたすら回収に努めているのが現状です。

毎月の収入・経費のメドがたてば資金計画もできるのですが、金融機関から見た新規開業は非常にリスキーな分野だと考えられています。

担保(預金や不動産)がない限り、従来のように開業にあたった銀行マンの「借りてください!」という態度は皆無です。

購入する医療機器が担保となりますが購入金額を大きく下回る金額の融資しか受けられません。
また、融資の返済期間は通常7or8年、長くて10年というのが相場です。
確約された返済にしか融資しないのが今の時代の金融機関です。

このような時代背景から、ノンバンクといわれるような金融業者が多くなりTVのコマーシャルもよく見かけるような大会社も増えていると認識しています。
医療機器はすべてリースにすると開業時の融資は最小限ですみます。

もちろん、長い目で見た場合の利益は圧縮されることになりますが、経営は、利益が出ていても資金がショートすれば意味を持たなくなり、破綻してしまいます。

ひとまずは、日本政策金融公庫(各市町村に必ずあります)等の政府系金融機関からの開業融資を申し込み融資期間と金額を打診してみてください。
そのあとに銀行(地方銀行のほうが融通がきくかもしれません)に同じように打診してみてください。

MRIのような高額な医療器械の場合、業者によっては比較的安価で中古物件を取り扱っている場合もあるようですので、在庫を確認してみるのも良い手だと思います。

日本政策金融公庫の場合は開業地の公庫になるのでしょうか?

日本政策金融公庫ですが、やはり開業地での融資が一般的です。

日本政策金融公庫は融資条件が一般の金融機関と比べ低金利なうえに固定金利です。
したがいまして、日本政策金融公庫からの融資を第一に考え、不足部分を他の金融機関で埋め合わせることが最善策だと考えます。

公庫融資を受ける際の何かポイントなどありましたら、お教え下さい。

日本政策金融公庫の新規開業融資は、一般の金融機関より甘いと聴いております。
ですが収支計画書の作成は必須です。

現在開業している人は実績があるので今後の予想しやすいのですが、新規開業の場合は予想が困難です。

しかし、貸す側としては無事に返済してもらえるかどうかは、収支の予想からしか判断できません。
そのためできるだけ細かい収支についての計画書を作成する必要があります。
更に、保証人や連帯保証人の確保も重要です。

配偶者・ご両親・ご兄弟・親戚といった方の協力が得られると良いのですが実際のところ難しい問題でもあります。
また、生活資金は融資の対象となりません。
事業が軌道に乗るまでの数ヶ月分の生活資金は自己資金で用意しておく必要があります。

固定費用にした方が良い項目ですが、大体どの位になるのか見当がつきません。
一般的な数値があれば教えてください。

固定費の考え方ですが、逆に考えると変動費以外の経費です。
通常、変動費は薬品や診療材料代と検査委託費くらいです。

それ以外のものは、ある程度固定的な金額となります。

具体的に発生すると考えられる費用項目を具体的に列挙してみます。

この数字(金額)は、一人医師のクリニックにおいて毎月最低限発生すると予想される数字です。

福利厚生費 人件費の10%〜20%程度
水道光熱費 150,000円
通信費 30,000円
諸会費 50,000円
旅費交通費 30,000円
保険料 50,000円
消耗品費 50,000円
新聞図書費 20,000円
警備・有線 ・清掃費 30,000円
税理士・労務士 60,000円

特に開業時は消耗品(事務用消耗品やゴミ箱・小棚等)の支出が大きくなりがちです。

開業準備が年度をまたぐことになりますが、
何かしておかなければならないことはないでしょうか?

開業に向けて、準備しなければいけないことは特にありません。

今まで通り、開業にかかわる(必要な)準備費用(税務上、開業費と称します)は領収書を整理することです。
この領収書には鉛筆書きでもいいですから、支払う目的や内容・理由を記入するように心がけてください。

必要な経費であるという証を残しておかないと、後から税務署から指摘される頃には数年経過しており「何のための支払であったか?」といった質問に回答できなくなる場合が多いからです。

尚、開業に際して発生する医師会入会金や単品10万円以上の備品等は、開業費には該当しないため開業準備費用とは別な注意が必要です。

領収書に明細書(内訳書等)を添付していただいておけば、開業準備費用といっしょにしておいても当方にて処理いたしますのでご安心ください。

それから、開業直前には薬品や消耗品、検査委託の取引業者への支払についての打合せが必要です。

各業者とも支払いについては、毎月末締めの翌月末払いでの支払を原則として交渉してください。
中には、保険請求は入金が2ヶ月遅れることから、開業当初(半年〜1年間)の支払を2ヶ月遅れで支払うようにしていただける業者もあるようですので、お願いしてみるのも良いかと思います。

また、従業員さんへの給与の計算期間についても考える必要があります。
おすすめは、毎月末締めの10日支払です。

給与計算は残業手当等の計算が必要なことや、銀行へ振込依頼すると2,3日しないと従業員の通帳には入金されないことから、余裕を持って10日間ほどあれば慌しくなることは避けられます。

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